犯罪を未然に防ぐ「予知防犯学」を世に広める

パンデミックと予知防犯−Y
〜企業・家庭も具体的な行動計画策定を〜

NPO 法人 日本防犯学校
理事長  阪本一央

 前号に続き、新型インフルエンザ対策について言及する。これまで5回にわたり 間もなく出現する H5N1 型新型インフルエンザウイルスによるパンデミックの脅威と問題点を述べてきた。企業も個人も想像力を働かせて対策を急がなくてはいけない。

 企業においては、一般に地震や台風、洪水などの不測の事態の発生により経営資源(社員・施設・機器など)が損傷を受けた際に、通常の事業活動を中断させないよう、残存する能力で優先すべき業務を継続させるための計画( BCP: Business Continuity Plan 、 事業継続計画 )策定が注目されているが、これまでの天災などと比較するとパンデミック時における被害は甚大であることから、その効果的な計画策定は非常に難しいものがある。例えば、地震や風水害は地域的であり、その被害は物理的および人的被害が出るものの、影響を受ける期間は比較的短期間である。一方、新型インフルエンザによるパンデミックは、地球的規模で起こり、物理的被害は出ないものの大きな人的被害から社会機能の崩壊に至り、他地域からの救援は望めない上、その期間は長期にわたり、さらに第2波、第3波と被害が拡大する。地域的な天災では、広範囲で社会機能の崩壊までは起きることが無いが、今回のパンデミックにおいては、医療・交通、運輸・物流・エネルギー・通信などの社会機能が崩壊する可能性がある。さらには経済崩壊にまで至り、復旧には多くの時間と労力を要する。予測される被害においては、天災とは比較にならないほどの最悪の事態が予想される。

 ただ唯一、天災と違って優位点があるとすると、天災は殆ど予告なしに発生するのに対し、今回のパンデミックは、今から確実に起こることが予告された災害であることだ。現在、WHOの警告フェーズは「3」であり、新型インフルエンザ発生の一歩手前まで来ている。我々は、このリードタイムを活かし国も企業も個人も対策を行う必要がある。

 企業においては、前述の天災における BCP の考え方をベースに対策を組み立てることで、ある程度達成されるが、その個々の部分を担うのは人である。しかし、個人の 生存継続計画 ( Survival Continuity Plan )とでも云うべき問題に対するマニュアルは殆どないのが現状である。そんな中、 厚生労働省は新型インフルエンザへの対策を強化するため、4月 1 日付で「新型インフルエンザ対策推進室」を設置し 29 名のスタッフが置かれた。これまでに比べると、新型インフルエンザに関する情報がマスコミに露出される機会も確実に増えて来ているが、まだまだこの新型インフルエンザに対する国民の認知度は低い。国民のひとり一人が関心を持ち、正しい知識を身に付けて対策を行うことによって、警告フェーズ「4」からパンデミックとなる「6」までの期間を延ばすことが可能になると考える。その時間稼ぎをしている間に、パンデミックワクチンが製造されることを祈る。通常、全国民分のパンデミックワクチンを製造しようとすると、新型インフルエンザ出現から半年から1年半を要する。ただし、現時点で、まだ国は具体的な製造計画を打ち出していない。パンデミック対策の先進国である米国では、新型インフルエンザ出現から半年以内に全国民分(約3億人分)のパンデミックワクチンを製造して接種する計画がある。カナダも4ヵ月で全国民分を生産する計画を打ち出している。先ごろ、厚生労働省も 6,000 人分のプレ パンデミックワクチンを今年中に医療従事者や検疫所職員へ接種する計画を発表した。そして有効性や安全性が確認されれば、来年度以降、警察官や自衛隊員、ライフライン業務従事者などの社会機能維持者約 1,000 万人に拡大する計画は打ち出しているが、肝心の一般国民に対する対策は宙に浮いた状態である。今の状態で新型インフルエンザが発生したら、間違いなく多くの国民がパニックに陥り、勿論、感染拡大は防げないばかりか、社会機能の崩壊に加え、暴動や凶悪犯罪が横行して事態は悪化するだろう。

次号では国民が今しなければならない対策について考察したい (次号に続く) 。

(セキュリティ研究2008年6月号 平成20年5月8日寄稿)


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